三重県の最低賃金、歴史的引き上げへ ~時給1,087円、地域と働き方に広がる新たな波~

三重県の最低賃金が64円引き上げへ

2025年8月16日、三重県で重大な賃金改定案が発表されました。県内の最低賃金が現行の1,023円から64円引き上げられ、時給1,087円となることが、三重地方最低賃金審議会によって答申されました。これは中央最低賃金審議会の目安に沿った内容であり、施行日は2025年11月21日を予定しています。

全国的な最低賃金引き上げの動きと東海地方の位置づけ

今回の三重県の改定は、全国的な最低賃金引き上げの流れと強く関係しています。例えば、宮城県でも初めて最低賃金が1,000円台に到達するなど、全国的に賃上げの波が広がっています。三重県の新最低賃金1,087円は全国的にも高い水準となっており、2024年度時点で全国第10位でした。

また、東海地方においては愛知県が1,077円、静岡県が1,034円(2024年10月時点)とされていますが、今回の引き上げで三重県は近隣県を上回る水準となりました。物価や経済規模、地域の労働市場の状況などを背景に、県民や事業者にとってもインパクトの大きい改定です。

三重県の最低賃金の推移

  • 2022年度:961円
  • 2023年度:973円
  • 2024年度:1,023円
  • 2025年度:1,087円(予定・答申)

この数年間で、三重県の最低賃金は着実に上昇を続けてきました。特に2024年から2025年にかけては一度に64円もの大幅アップとなり、賃上げのスピードが上がっていることが分かります。

なぜ今、急速な引き上げなのか?

政府は「全国平均1,500円」を長期的な最低賃金の目標として掲げており、物価高騰や世界的なインフレ、さらに労働力不足への対応など、社会的な背景からも最低賃金の積極的な引き上げが求められています。加えて、労働者の生活安定や地域経済の活性化を受け、地域ごとに適切な水準の設定が進められています。

三重県内企業と働く人々への影響

最低賃金の引き上げは、県内企業や働く人々にさまざまな影響をもたらします。

  • パート・アルバイト・非正規雇用の方々にとっては、名目賃金の上昇は生活の安定に直結します。特に最低賃金付近で働く人々にとっては、実質的な収入増となります。
  • 一方、中小零細企業や個人事業主などは、人件費負担の増加により経営への影響が避けられません。今後は生産性向上や価格転嫁、業務効率化などが求められる場面が増えるでしょう。

最低賃金は「全ての事業所で原則的に守るべき法定最低ライン」とされているため、県内のほとんどの業種や職種に関係します。従い、改定幅が大きいほど、実際の現場に与える意義も強くなります。

他県の動きと地域間バランス

  • 宮城県でも2025年10月から65円引き上げ、初の1,000円台(1,001円)となったことが話題となりました。最低賃金1,000円突破は地域経済において歴史的節目と言えます。
  • 沖縄県においても最低賃金の引き上げを巡り、労使間で激しい綱引きが続いています。労働側は「県外並みに」と1032円を要求する一方、使用者側(中小企業)は「経営が苦しい」と慎重な姿勢を見せています。

三重県もまた、この全国的な議論の渦中にあり、都心部・地方部の地域格差解消にも寄与する動きとなっています。

三重県最低賃金の適用範囲と例外

三重県の最低賃金は、原則として県内のすべての労働者とその雇用主に適用されます。雇用形態や国籍に関係なく、「パートタイマー」「アルバイト」「派遣」「学生アルバイト」にも適用されます。ただし、一部の特定最低賃金(産業別最低賃金)の適用を受ける業種については、別に定められた最低賃金が優先されることがあります。

違反した場合には法的な罰則が科されるため、事業主は十分な注意が必要です。特に引き上げ後の賃金未改定にはご注意ください。

県民や労働者に向けたアドバイス

  • 2025年11月21日からは新しい最低賃金1,087円が適用されます。ご自身の時給や給与がこれを下回っていないか、しっかり確認しましょう。
  • アルバイトやパートなどで勤務されている方も、新賃金額が適用されているか職場へ確認することをおすすめします。
  • もし違反があった場合は、最寄りの労働基準監督署へご相談ください。

まとめ:三重県の最低賃金改定の注目点と今後

今回の三重県最低賃金の大幅な引き上げは、全国的な賃上げ機運を反映したものであり、経済や働き方への影響が大きい「ターニングポイント」といえるでしょう。物価・人手不足・家計圧迫といった社会情勢の変化を背景に、今後も最低賃金の引き上げが続く見通しです。

事業主・労働者それぞれが最新情報をしっかり確認し、適切な対応を心がけることが大切です。「誰も取り残さない社会」、そして“三重で働いてよかった”と実感できる職場づくりへの一歩として、この賃金改定を前向きに受け止めたいものです。

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