映画『国宝』が関西を沸かす——聖地巡礼と歌舞伎文化再評価の波

2025年夏、日本中が熱狂——映画『国宝』とは?

2025年6月に公開された大ヒット映画『国宝』。主演は吉沢亮さん、監督は李相日さんが務め、伝統芸能・歌舞伎の世界を舞台にした壮大な人間ドラマです。主人公・喜久雄が幼少期から半世紀に渡って芸の道に人生を捧げるという一代記が、丹念かつ迫力ある描写で描かれました。上映時間は約3時間という長編ですが、「芸術性」と「エンターテインメント性」を兼ね備えた稀有な作品として、各世代で大きな反響を呼んでいます

関西各地で聖地巡礼フィーバー——実際のロケ地にファン殺到

映画最大の特徴は、ほぼ全編が関西で撮影された点です。特に撮影地となった兵庫県豊岡市の「出石永楽館」は、普段なら1日40〜50人ほどの来館者が、映画公開後はなんと1日700人近くまで急増。「楽屋」で親子そろって熱演するファンの姿も珍しくありません。このブームを受け、滋賀県では『聖地マップ』が作成され大好評となっています。「ここが映画で使われたあの場所!」と、感動の面持ちで写真を撮るファンや、舞台のモデルになった土地を実際に訪ねて演じ合う親子連れも多く、地域にも新たな活気を呼び込んでいます

  • 聖地:「出石永楽館」(兵庫)
  • その他撮影地:大阪府内の千日前・道頓堀、滋賀県内の寺社など多数
  • 滋賀県「聖地マップ」:主要ロケ地やゆかりのスポットをイラスト付きで明示

これらのスポットには地元飲食店の新メニューや限定グッズも登場し、“映画と地域活性”の新たなモデルケースとしても注目されています。

圧倒的なリピーターと熱量高いファン——「10宝目」「フル版3万円」の声も

本作が大ヒットとなった要因のひとつが、リピーターの存在です。映画館では「今日で10回目」「違う角度から何度も味わいたい」「もしカットなしのフル版が出たら3万円でも買う」といった感想が多く聞かれます。上映3時間ながら、その密度と迫力にとりこになり、何度も足を運ぶファンが後を絶ちません。特に歌舞伎を愛する年配層と、SNS世代の若者が一体となって支持を広げています

  • 「10宝目」=10回目の鑑賞(「国宝」=「宝」から)
  • 「フル版が欲しい」「3万円でも観たい」熱烈なファンの声
  • 役者の年齢による細やかな演じ分けに感動のコメント多数

“歌舞伎”という伝統文化が、現代にどう語り直されたのか

注目すべきは『国宝』が歌舞伎という伝統芸能をテーマにしつつ、若い世代まで物語世界の奥深さを届けている点です。決して“堅苦しい伝統もの”にとどまらず、家族関係や葛藤、芸の道に人生を捧げる苦しみと喜びを人間ドラマとして昇華。その芸術性とリアリティが、「歌舞伎に縁がなかった」という新たな観客層の心も動かしています

  • 美しい所作や音楽、舞台転換の工夫
  • 関西弁・京都弁など、地域色豊かな会話もリアリティ
  • 吉沢亮・横浜流星らによる女形の練習量と演技巧者ぶりも話題

関西出身の観客からは、「地元の言葉や景色がそのまま映画の世界になって誇らしい」「生きた文化が息づく瞬間を見た」と感想が多く寄せられています。

超大作の製作背景と、出演者たちの思い

2025年8月10日に大阪で行われた特大ヒット記念舞台挨拶には、吉沢亮さんと李相日監督が登壇。吉沢さんは「この撮影の舞台にもなった関西で舞台挨拶ができることを非常にうれしく思う」と思いを語り、ファンからは熱い拍手が送られました。撮影期間中は「一つ一つの動作に説得力を持たせるために、古典歌舞伎の所作や台詞練習を重ねた」とも明かしています

  • 徹底した役作り:芸の道に捧げた役者の人生を、10年単位で年齢を分けて熱演
  • 「出石永楽館」や大阪・京都の各会場でのロケに思い入れ
  • 地元劇場館が期間中ほぼ毎日満席

映画業界も驚く規模——2025年実写映画No.1、観客動員・興行収入

「国宝」は公開初週こそ「興収3億4600万円」「週末動員ランキング3位」と普通のスタートでしたが、2週目以降リピーター効果もあって興収や動員数が急増。公開から2か月弱で観客動員604万人、興行収入85億円(2025年公開の日本実写映画No.1)という驚異的な数字を記録します。劇場公開作品92本の中でも記録的ヒットであり、「2025年上半期の映画界を代表する作品」とも評価されています

レビュー・批評も高評価——“国宝級”の名に恥じない?

映画ファン・映画批評家からも「国宝級の映画」と絶賛の声が多数あがっています。レビュー記事では「一つ一つのシーンに丁寧な作り込みがあり、関西の街並みや言葉遣いに没入感が生まれる」「役者の熱演と時代を超える人間関係の描写に心が打たれる」といった評価が目立ちます

また、歌舞伎特有の舞台演出や舞踊の見事さも「これぞ芸術映画」という称賛があり、出演者の役作りに対する真摯な姿勢への評価も高いです。レビューからは「曽根崎心中」など実在の演目をモチーフにした脚本や、人生賛歌としての側面に熱いコメントが寄せられています。

  • 歌舞伎未体験の若者にも「興味がわいた」「舞台も観てみたい」との声
  • レビュー満点や映画批評サイトでの高得点を連続記録

“映画の力”と地域の新たなつながり——今後の可能性とは

本作“国宝”人気の波は、単なる映画ファンの熱狂にとどまりません。関西各地の“聖地”には、これまで観光の中心にならなかった演劇場や地域商店、町の文化資源にも新たな光が当たり、「映画×地域活性化」を後押ししています。滋賀・兵庫・大阪の官民連携による“聖地マップ”作りや、伝統芸能に新しく触れる子どもと大人の交流、商店会による記念イベントや限定商品など、多様な展開が生まれています

有名な映画館では“親子で小さな劇をやってみるコーナー”や、“歌舞伎体験教室”なども開かれ、映画の余韻を楽しむ文化体験の場として大いににぎわっています。

まとめ:令和の“国宝”——映画を通じて受け継がれる伝統と新しい感動

「国宝」は、その名にふさわしく、伝統芸能である歌舞伎の奥深い魅力と、現代の人びとが共感できる人間ドラマの両方を深く描ききりました。関西の美しい景色と文化を背景に、観る者ひとりひとりに自分だけの“聖地体験”と“感動の記憶”を残しています。

リピーターによる支え合いや、若者も巻き込んだ熱狂的な広がり。映画をきっかけに歌舞伎や地域文化が見直され、親子・世代を超えた新しい“つながり”も生まれています。2025年の日本映画界が生んだ、まさに“国宝級ヒット”映画。それが令和の日本を包む温かな空気と活力の源と言えるでしょう。

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