韓国・李大統領が慰安婦問題にメッセージ 記憶の継承と歴史への向き合い方
はじめに
2025年8月14日、韓国ソウル市で旧日本軍の従軍慰安婦問題を語り継ぐ記念日の式典が開催されました。この日、韓国政府は「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」として、被害者の名誉回復や歴史の記憶の継承にむけて、さまざまな取り組みを行っています。李在明(イ・ジェミョン)大統領は映像メッセージを寄せ、被害者への思いや今後の政策について強調しました。韓国国内、また日韓関係、さらにはベトナムをめぐる歴史問題にも影響を与えうる動向となっています。
李大統領の慰安婦問題に対するメッセージ
今年の式典で李大統領は「被害者の名誉を守る」と強調し、被害者の方々が直面した苦しみと不正義に国家として向き合う姿勢を示しました。大統領は、被害者を中心とした政策推進の原則を堅持し、慰安婦問題を国家的課題としてしっかり取り組んでいくことを約束しています。
政府代表として出席した申英淑(シン・ヨンスク)女性家族相代行は「被害者にとって本当の光復(解放)はまだ実現していない」と述べ、歴史を曖昧にせず、被害者中心主義による政策実践の必要性を訴えました。
ソウル・少女像前で交錯する記憶と否定
慰安婦問題では、ソウルの少女像前で毎週のように「水曜集会」が開催されています。ここでは元慰安婦の支援者たちが集まり、記憶の継承と歴史的責任を訴え続けています。一方、右派団体による抗議活動も行われており、歴史認識をめぐる記憶と否定が交錯する場所となっています。
- 「水曜集会」では、被害者や支援者が自らの声を上げ、社会に被害の記憶を伝えています。
- 右翼団体は、慰安婦問題の否定や批判的見解を主張し、集会と対峙する構図が続いています。
- 韓国の市民社会にとって、少女像前での集会は歴史的事実を社会に問い直す象徴的な場となっています。
このような集会が日本だけではなく、世界各地でも展開されている現状が、記憶の継承とそれに対する反発の両方を浮き彫りにしています。
国家人権委員会の声明と被害者中心主義
独立機関である国家人権委員会は、「韓国と日本は2015年に慰安婦被害者問題の解決策に合意したが、被害者の意思が十分に反映されなかった」と指摘しています。本当に実質的な賠償や名誉回復が行われるためには、被害者の立場を最優先し、韓国政府が一貫して努力し続ける必要があると訴えています。
この主張は日韓間の歴史問題だけでなく、国際社会での人権問題の扱い方にも通じています。被害者の声をきちんと聴き、その立場に立った政策や外交努力が求められています。
ベトナムの歴史問題への波及と新たな課題
最近では、韓国・李大統領がベトナム戦争における韓国軍の行為など「ベトナムの歴史問題」にも言及しはじめています。ベトナム戦争中の民間人被害を含む問題は韓国国内でも長く「タブー」とされてきましたが、李大統領の発言により歴史問題として改めて論議されています。
- 韓国軍によるベトナムでの民間人被害について、韓国大統領が初めて公に発言したことで、これまで触れられなかった歴史的課題が表面化しています。
- この動きは「慰安婦」や「徴用工」など日韓間の歴史問題にも波及し、被害者救済や名誉回復への機運が再燃する可能性をはらんでいます。
- 日韓の元慰安婦や徴用工が、ベトナムの歴史問題とも関連付けて語られることで、アジア地域全体が抱える過去の人権問題への再考が始まっています。
日本政府や韓国政府、そしてベトナム政府も巻き込む形で、歴史認識と被害者の名誉回復をどのように実現へ導くか、難しい課題が浮き彫りになっています。
過去をどう乗り越えるか〜記憶の継承と未来への責任
慰安婦問題や徴用工問題、そしてベトナム戦争における民間人被害など、いずれも戦争や国家による重大な人権侵害を背景としています。歴史的事実の適切な継承、被害者中心主義の徹底、そして加害・被害双方の対話と理解が、真の和解や名誉回復への第一歩です。
- 歴史の事実を正しく記憶し、次世代へ語り継ぐことが社会全体の責任であること。
- 被害者の人権尊重と名誉回復が、単なる謝罪や賠償を超えて、共生に向けた出発点になること。
- 歴史問題に関する社会の分断を超え、未来志向の外交と政策につなげるために何ができるかを考える必要があります。
慰安婦問題に取り組む政府や市民社会、そしてベトナムの歴史問題に向き合う新たな動きは、戦後アジアの平和と人権の構築に向けた大切な一歩です。今後も、被害者一人ひとりの声に耳を傾け、歴史への誠実な向き合い方が求められていきます。
まとめ
韓国の李大統領による慰安婦問題に関するメッセージは、被害者の名誉回復と歴史継承への誓いを改めて強調するものでした。少女像前での記憶の交錯や国家人権委員会の声明が示すように、過去の人権問題への真正面からの向き合いが、社会や国際関係に大きな影響を及ぼしています。また、ベトナムの歴史問題に触れることで、アジア全体の過去の人権課題が改めて問い直されています。
清算されていない過去と向き合うためには、ともに歴史を記憶し、被害者中心の立場を貫く政策の推進、そして社会的な対話が不可欠です。国境を越えた課題として、今後の動向が注目されています。