甲子園・津田学園、広陵の辞退による不戦勝と異例のアカペラ校歌斉唱
広陵高校の出場辞退で津田学園が“不戦勝”
2025年8月14日、全国高校野球選手権大会(通称・夏の甲子園)は、熱戦の続く2回戦が進行していました。その中で注目された第4試合、三重県代表・津田学園と広島県代表・広陵高校の一戦は、特別な形で進みました。
この試合は当初、両校の実力をぶつけ合う好カードとして期待されていましたが、直前になって広陵高校が部員による暴力行為問題を理由に出場を辞退することとなりました。急遽決まった辞退劇は大会関係者のみならずファンにも大きな驚きを与えました。広陵側は「出場辞退」のみが発表され、その具体的な事実関係についてはコメントを差し控えるという異例の対応となっています。
甲子園で“異例”の調整練習
広陵高校の出場辞退を受けて、津田学園は2回戦を不戦勝で突破することとなりました。通常、勝利後は喜びに溢れた校歌斉唱やベンチ前での選手たちの姿が印象的ですが、この日は試合がなく、独特な雰囲気に包まれました。大会側は急な試合中止・不戦勝の事情を考慮し、津田学園側の要望を受けて「特別措置として甲子園球場での調整練習」を認めました。
第3試合終了後、津田学園ナインは1時間にわたり、シートノックや実戦形式の打撃練習を集中して行いました。選手たちは熱心に体を動かし、通常通りの公式戦へ向けた調整を重ねています。これは公式戦での不戦勝が決まった当日に、甲子園のグラウンドで特別に練習枠が設けられた非常に“異例”の対応となりました。
練習締めはアカペラでの校歌斉唱「リセットの意味を込めて」
練習の締めくくりには、ベンチの選手・スタッフ全員が外野に一列に並び、アカペラで校歌斉唱。普段であれば勝利を祝して観客席に響く校歌ですが、この日は“誰のためでもなく自分たちのために”声高らかに歌い上げた姿が印象的でした。
佐川竜朗監督(47)はこの取り組みについて「不戦勝という形にはなりますが、我々にとって2回戦が大きな壁だった。校歌を歌って気持ちをリセットし、次の試合への準備に集中したい」と語りました。「最後に全員で校歌を歌おうと、選手たちには伝えていました。いい練習ができたことはプラスに捉えている」と前向きな姿勢も強調しました。
- 不戦勝にもかかわらず、校歌を全員で歌うのは非常に珍しい出来事であり、校歌に込める想いの強さ、そしてこれまで続けてきた努力への区切りの意味合いも込められています。
- 練習に参加した主将の惠土湊暉選手は「自分たちは広陵に勝って次の試合に進みたいという気持ちが強かったので、この結果については特に感情の起伏はない」と冷静なコメントを発しています。
- 初戦で138球の完投勝利を収めたエース桑山晄太朗投手(3年)は、「間隔が空いて体力回復の時間が取れたことを前向きに捉えたい」と心境を口にしました。「次の横浜戦は強敵。打線も投手陣も隙がないが、自分たちも食らいつき、必ず勝って再び校歌を歌いたい」と力強く語っています。
ファンや関係者も戸惑い――運営側の対応と今後の注目ポイント
今大会は例年にも増して高い注目度を誇っていますが、強豪・広陵高校の不戦敗という形で幕を下ろしたことで、多くの高校野球ファンや関係者からも「残念」「選手たちの思いはどうなるのか」など、戸惑いの声があがっています。甲子園の運営側は「大会の公正を守る」という観点からも苦渋の決断をしたとされていますが、それだけに津田学園ナインの甲子園での姿勢や気持ちの切り替え方にはリスペクトの声が集まっています。
特に、津田学園の選手が不戦勝という巡り合わせの中でも“与えられた環境下で前向きに練習を積む”姿、自らの想いを込めて校歌のアカペラ斉唱を行う姿は、多くの人々の心に響くものがありました。彼らの「プレーで見せる」次の試合――17日の神奈川・横浜高校との3回戦――に今後ますます注目が集まります。
津田学園のこれまでの道のりと今後の展望
- 今大会、津田学園は初戦で138球の力投を見せた桑山投手の活躍で、叡明高校(埼玉)を下し、2回戦進出を決めていました。
- 本来であれば広陵との激戦が予想されていましたが、不戦勝という形で次戦へ駒を進めることとなり、次なる対戦相手は春夏連覇を狙う名門・横浜高校です。
- 横浜高校は3回戦進出まで安定した戦いぶりを見せており、攻撃力・守備力双方に隙のない総合力が強み。津田学園との一戦が熱戦になることは必至で、全国のファンが大きな期待を寄せています。
津田学園は「与えられた時間を最大限に生かして」(桑山投手)、「本来ならば広陵に勝って勝ち上がるはずだった」(惠土主将)という想いを胸に、それぞれ「自分たちが今できること」「持てる力をグラウンドにぶつけること」を原点に、次なる戦いへの準備に余念がありません。
まとめ:高校野球ならではのドラマと強豪校のプライド
甲子園という夢舞台は、時に思いもよらぬ展開を迎えるものです。今回の津田学園の不戦勝、そして異例の甲子園練習と校歌斉唱は、選手たちの「今できることをまっすぐに」という姿勢を強く映し出しています。彼らのまっすぐな眼差しと校歌に込めた想い、甲子園でのプレーを通してその全てが伝わってくることでしょう。
次の横浜高校戦に向けて、津田学園ナインの挑戦を応援しながら、高校野球らしい熱いドラマの続きに注目していきたいと思います。