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ベネチア国際映画祭2025――映画芸術、コミュニティ、イマーシブ体験の最前線

ベネチアは2025年8月27日から9月6日まで、世界中の映画人やファンの熱気に包まれています。イタリア・リド島を舞台に開催される第82回ベネチア国際映画祭は、「映画芸術、コミュニティ、イマーシブ体験」というテーマが色濃く反映され、例年以上に多彩な話題を集めています。今年は国際的な大作やインディペンデント作品だけでなく、最先端のXR(エクステンデッド・リアリティ)技術による新たな没入型体験が注目を浴びています。また、ドーハ・フィルム・インスティテュート(DFI)の支援を受けた作品による歴史的な参加数など、多方面で「記録」と「革新」が生まれています。

映画祭の概要と意義

ベネチア国際映画祭は、カンヌ、ベルリンと並び「世界三大映画祭」のひとつに数えられています。今年も公式ディレクター・アルベルト・バルベラ氏のもと、自由と対話を重視する映画祭の精神を守りながら、映画芸術の促進と国際交流に寄与しています。毎年スター監督や俳優が集う華やかな催しですが、同時に新たな才能や技術を世界に紹介する登竜門でもあります。2025年は特にXR分野の台頭が顕著で、未来の表現形式を示す舞台となりました。

第82回ベネチア国際映画祭2025の主なトピックと特徴

  • 多様なセレクション:コンペティション部門はもちろん、オリゾンティ(新潮流作品)、クラシック映画修復、アウト・オブ・コンペティション(特別招待)、そしてイマーシブ部門など複数のカテゴリーで構成されています。
  • 国際色豊かなラインナップ:今年は66カ国から多様な作品が集まり、メインコンペには著名な映画人が多数選出。特にペドロ・アルモドバルやティルダ・スウィントンなど、世界トップレベルのクリエイターが参加しています。
  • 日本映画の存在感:細田守監督のアニメーション『果てしなきスカーレット』が「アウト・オブ・コンペティション」部門、藤元明緒監督の『LOST LAND/ロストランド』がオリゾンティ部門にエントリー。さらに和田淳監督のVRアニメ『猫が見えたら』がベニスイマーシブ部門に選ばれ、日本からも多様な表現がベネチアの舞台で評価されています。
  • 受賞セレモニーと審査員:受賞式は9月2日・3日にパラッツォ・デル・チネマで開催。審査員にはトマソ・サンタムブロジオや著名な映画人が名を連ね、作品だけでなく学生作品や新人監督部門も盛況です。

Venice Immersive 2025:島とコミュニティ、XR表現の進化

ベネチア映画祭におけるVenice Immersiveは、バーチャル・リアリティ(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(XR)の分野に特化した公式部門です。今年は27ヵ国から69のイマーシブ・プロジェクトが集結し、従来の映画体験の枠を超えた新しい物語・アート体験を提示しています。参加者はリド島の特設スペースで360度映像、インタラクティブストーリーテリング、身体全体を使って体感するアート作品など、多様な次世代エクスペリエンスに没入できます。

  • アーティストとクリエイター、プログラマーが世界中から集い、現地で「体験を共有するコミュニティ」が形成。
  • 仮想空間や現実世界と融合し、個人や社会が直面する課題(移民、ジェンダー、環境など)をXRを使って表現する試みが多数見られます。
  • 和田淳監督『猫が見えたら』は、日本的な繊細さとVRならではの臨場感で国際的な注目を集めています。

XR(複合現実)が広がることで、映画祭自体が「観るだけ」から「参加する場」へと進化しています。ユーザーが物語の一員となれる双方向体験は、これからの映画や物語芸術の新しい方向性といえます。

映画祭の主役――話題作と名監督たち

  • ペドロ・アルモドバル監督『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』:前作からの進化を見せ、新境地を切り開くスペイン映画界の巨匠がメインコンペに登場し、世界的評価を集めています。
  • マウラ・デルペロ監督『ヴェルミリオ』ブラディ・コーベット監督『ブルータリスト』など、各国から個性豊かな作品が出品され審査員や観客を魅了しています。
  • 俳優賞ではニコール・キッドマンやバンサン・ランドンなど、世界有数の演技派が受賞候補として名を連ね、大きな話題を呼びました。
  • 若手の登竜門〈マルチェロ・マストロヤンニ賞〉も健在。新人俳優への注目も、今後の映画界を占う上で見逃せません。

DFI(ドーハ・フィルム・インスティテュート)による歴史的サポート

今年の映画祭でもうひとつ注目されたのはDFI(ドーハ・フィルム・インスティテュート)支援作品の躍進です。2025年は過去最多となる12本ものDFIサポート作品が公式選出されました。中東を中心とした新しい才能がグローバルに飛躍する背景には、DFIによる資金面・育成面での多角的支援があります。これらの作品は多様性や社会性を強く打ち出しており、映画祭の国際的意義を色濃く示すことに成功しています。

映画祭を支えるコミュニティと未来志向の取り組み

ベネチア国際映画祭には単なるエンターテインメントの枠を超え、コミュニティの形成・発展という側面もあります。映像作品の通じた異文化交流、ジェンダーや環境を考える社会的なイベント、若手クリエイターを育てるワークショップ、市民とアーティストが交流できるパブリックプログラム――これらが根付き、町全体が「映画」という文化で結ばれる独特の雰囲気が生まれています。

映画祭期間中、世界各地から映画ファン・メディア・業界関係者がリド島やベネチア中心部に集まり、上映作品を巡って活発な議論が交わされています。会場だけでなく、街角のカフェ、パブリックビューイング、オンライン配信でも熱気が波及し、誰もが「映画の力」を実感できるのが、本映画祭最大の魅力でもあります。

まとめ――ベネチア映画祭が描く未来

2025年のベネチア国際映画祭は「映画芸術の現在」であり「未来のイマーシブカルチャー」の実験場でした。Venice ImmersiveによるXR体験は、従来の映画の枠を超えた新たな物語表現の可能性を提示。世界各地から集う多様な監督や俳優、熱意あるファン、若手制作者、技術者たちがつながる“場”として、ベネチアはこれからも映画の最前線であり続けることでしょう。

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