富山地方鉄道、2026年秋に一部路線廃止の可能性が浮上

富山県の地域交通を支える富山地方鉄道が、深刻な経営難から2026年秋をめどに一部路線の廃止を検討していることが報じられ、大きな波紋を広げています。対象となるのは、本線の「滑川~新魚津間」と立山線の「岩峅寺~立山間」の2区間。両区間とも、現状のままでは運行継続が困難と判断され、今秋にも廃止の結論が固まるか注目されています。

1. 廃止検討の背景と現状

富山地方鉄道は富山県内に約108kmの鉄道路線網を持つ地方私鉄です。しかし、近年は利用者減少や収支の悪化に直面し、特に今回廃止対象の2区間は経営の重荷となっています。最新の決算では、鉄道事業で約6億6400万円もの営業赤字を計上しており、補助金がなければ赤字がそのまま経営を圧迫する状況となっています(出典1)。

特に滑川~新魚津間は、北陸新幹線開業に伴いJR西日本から分離された第三セクター「あいの風とやま鉄道」と並行しており、旅客数が限定的です。一方、立山線の岩峅寺~立山間は、世界有数の山岳観光地である立山黒部アルペンルートの足掛かりとして年間80万~100万人の観光客が利用するものの、年間を通じた採算は厳しく、不採算路線とされています(出典5)。

2. 「伝家の宝刀」を抜いた決断

富山地方鉄道関係者は、行政からの支援が得られない場合、2026年秋に両路線を廃止する方針を固めたと報じられています。これは同社にとって最後の手段とも言える「伝家の宝刀」を抜く決断であり、地元自治体と協議を続けていますが、協力が得られなければ廃線の可能性が極めて高い状況です(出典3)。

同線区の廃止は、単なる路線の消滅にとどまらず、立山黒部アルペンルートの観光ルートに影響を与えるとして懸念されています。鉄道の廃止によって観光客の移動が著しく不便になり、観光への影響は避けられません。これに対してはバス代替の案も浮上し、現在は観光バスへの置き換えやサービス向上を模索している段階です(出典4)。

3. 自治体支援の動向と今後のスケジュール

富山地方鉄道は路線の維持に向け、みなし上下分離方式など、費用負担を自治体に求める支援策を提案しながら対話を続けています。しかし、具体的な支援合意がなければ、2026年11月末をもって廃止申請を行う予定です。今秋、2025年秋にも中間取りまとめが行われ、最終判断の方向性が示される見込みです(出典1)。

立山線に関しては、立山町が中心となり、2027年度に再構築事業に着手する計画が示されていますが、その実現は行政支援の決定にかかっている状況です(出典1)。

4. 富山県の交通政策と観光への影響

富山県はこれまでも「鉄道軌道王国とやま」として県内の鉄道網の重要性を訴え、地域交通の維持や観光振興に力を注いできました。さらに2026年以降には、立山黒部アルペンルートと黒部峡谷鉄道を結ぶ新観光ルート「黒部宇奈月キャニオンルート」の開業が予定されています。県の肝入り事業を支える交通ハブとして立山線の役割は大きく、その廃止は観光面での連携や集客力に大きな影響が懸念されます(出典5)。

5. 利用者・地元からの声

この発表に対し、地域住民や観光業関係者からは不安の声が広がっています。廃線が実現すれば日常の通勤通学はもちろん、観光客の利便性低下や地元経済への影響も懸念されます。一方で、経営的には無理を続けるよりも、バス路線への転換等により持続可能な交通体系の構築を求める声もあります。

まとめ

富山地方鉄道は現在、経営難の深刻化によって沿線の一部路線を2026年秋に廃止する方針の瀬戸際にあります。これらの路線は地域住民の生活や日本有数の観光ルートを支える重要な役割を担っているため、その存続可否は地元自治体の支援次第という厳しい状況です。今後、行政との協議の結果が注目され、決断の時期が迫っています。

富山県と富山地方鉄道、さらには関係自治体が協力し、地域の交通と観光をどのように守り、再構築していくのかが今後の大きな課題と言えるでしょう。

参考元