これまでの稚内市のコンビニ事情
北海道の最北端に位置する稚内市は、日本の最北の街として知られています。人口は約3万人と比較的少なく、過疎化も進む中で、市内のコンビニエンスストアは、北海道発祥の「セイコーマート」が圧倒的なシェアを占めてきました。2025年3月末時点で、セイコーマートは18店舗を展開し、市民の日常生活に深く根付いていました。
一方で、全国規模の大手コンビニであるセブン-イレブンやファミリーマートは、人口や物流の課題からか、稚内市への進出を控えてきました。長らく「セイコーマート一強」とも言える状況が続いていたのです。
ローソンの出現と加速する出店
そんな状況に一石を投じたのが、ローソンです。2023年8月1日、ローソンは「ローソン稚内栄五丁目店」と「ローソン稚内こまどり五丁目店」の2店舗を同時にオープンし、稚内市に進出しました。この年の11月までにさらに2店舗を開き、短期間で4店舗体制を整えました。
そして、2025年6月5日には、「ローソン稚内萩見五丁目店」「ローソン稚内宝来店」「ローソン稚内声問店」など、市内で3店舗が同時にオープンする予定です。これで稚内市内のローソンは7店舗体制となり、今後も出店計画が進められています。
- 2023年8月1日:ローソン稚内栄五丁目店、ローソン稚内こまどり五丁目店(2店舗同時オープン)
- 2023年8月25日:ファイターズローソン稚内はまなす店(ご当地色強い店舗)
- 2023年11月28日:ローソン稚内副港通店
- 2025年6月5日:ローソン稚内萩見五丁目店、ローソン稚内宝来店、ローソン稚内声問店(3店舗同時オープン予定)
なぜローソンだけが生き残るのか
ここで大きな疑問が浮かびます。なぜ、セブンやファミマではなく、ローソンだけが稚内市で店舗を増やし、利益を出すことができているのでしょうか?
その理由はいくつか考えられます。
- 物流インフラの強み:ローソンは独自の物流体制を持ち、都市部だけでなく、地方・過疎地域にも対応できる柔軟な仕組みを整えています。
- フランチャイズオーナーの誘致:地域に根差した経営者を積極的に募集し、地元のニーズに合わせた店舗運営を行っています。
- 商品開発の工夫:地元産品やご当地商品の取り扱いを強化し、セブンやファミマにはない地域密着型の品揃えを実現しています。
また、北海道全体で見ると、ローソンは道内複数の都市で同日に店舗をオープンさせる戦略をとっており、大量の商品を効率的に発注・配送できる強みもあります。こうした「ワンチャンス大量出店方式」が、北の地での利益体制作りにつながっているのです。
地域に与える影響と今後の展望
ローソンの進出は、稚内市のコンビニ地図を大きく塗り替えるきっかけになりつつあります。これまでセイコーマート一強だった日常に、ローソンという新しい選択肢が加わったことで、市民生活はより便利になりました。商品やサービスの多様化、品質の向上、価格競争など、健全な「コンビニ戦争」が始まることで、消費者にとってはメリットが生まれるでしょう。
一方で、今後さらにローソンの出店が進めば、セイコーマートとの競合がより激しくなることは避けられません。両社の違いを活かす商品構成やサービス展開、地域密着型の取り組みがより一層求められるようになるはずです。
また、店舗数が増えることで、ローソンは稚内市内や近郊に物流拠点を新設する可能性も出てきています。もしそれが実現すれば、近隣地域への出店も加速し、宗谷管内全体のコンビニ事情が大きく変わっていくかもしれません。
まとめ――ローソンと稚内、そして地域の未来
ローソンが日本最北の街・稚内に次々と店舗をオープンし、利益を出している背景には、綿密な物流戦略や地元経営者との連携、独自の商品開発など、多角的な工夫があります。セブンやファミマが二の足を踏む中、ローソンだけが「過疎地域でも繁盛店を出せる」というビジネスモデルを体現し始めているのです。
これは単なる「コンビニの増加」にとどまりません。地域経済の活性化、市民生活の利便性向上、そして他企業への刺激――ローソンの挑戦が、稚内市の未来をより明るいものへと導いていく可能性を秘めています。
これからも、ローソンとセイコーマートとの「最北コンビニ戦争」、そして地域と歩むローソンの姿に、引き続き注目が集まりそうです。