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“リアカー+小屋”で、小商いの原点を楽しむ。夜市を彩る星空バル「Ricorita」店主が見つけた“自分自身の人生”とは?

2016.07.13 | 出展店舗
“リアカー+小屋”で、小商いの原点を楽しむ。夜市を彩る星空バル「Ricorita」店主が見つけた“自分自身の人生”とは?

夜市ファンのみなさん、お待たせしました。 大磯市は、今月から時間帯を夜にシフト。17時〜20時半、9月まで3ヶ月間限定で夜市としての開催になります。日中の暑さが落ち着き、海風に吹かれてちょいと一杯。そんな夏祭り気分を味わいたいみなさんに、今日はとっておきの出店者さんをご紹介します。

自作の“リアカー+小屋”で、屋台風の移動式バルを営んでいる「Ricorita(リコリタ)」。昔ながらの小商いを想起させるそのスタイルは、キッチンカーとはちょっと違う、独特の雰囲気を醸し出しています。カウンター越しに設置されたテーブルでいただけるのは、季節の野菜をふんだんに使った色とりどりのお料理と、ビールやワイン。夜市気分がいっそう盛り上がること、間違いなしです。

今日は「Ricorita」店主・鈴木健之さん(通称・ブッチさん)に、お話を聞きました。伝えたいのは、食のこと、子どもたちの未来のこと。さまざまな想いが凝縮されたブッチさんの人生のストーリーを、夏の夜風とともに感じてみてください。

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食から子どもへ。めぐりめぐる想い

もともと飲食をはじめたきっかけは、20代の頃、沖縄から北海道まで日本を縦断したことでした。半年くらいして帰ってきたとき、料理だったらどこへ行っても仕事ができるな、と思ったんですよね。

でも、それまで全く料理の経験はなかったので、未経験で入った海鮮和風居酒屋の厨房で、いきなり挫折しちゃったんです。料理には興味があったんですけど、すごい長時間労働で、仕事以外何もできなくなって…。しかも、僕は左利きで、和食では包丁の刃が逆になってしまうので、それを直さなくちゃいけなかった。身体のバランスも心のバランスもおかしくなってしまいました。

それで、半年ほど勤めた後に、今度は左利きのまま調理できる洋食屋さんで働き始めました。でも、最初の和食の店でもそうだったんですが、市販のドレッシングや固形スープを使っていることに、すごい違和感を覚えて。そのときは、化学調味料への違和感というよりは、「大事なところサボってんじゃん!」って感覚。それは今も続く原点みたいな想いでしたね。

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その後、別のカフェで働いていたときに子どもができて、もうちょっと稼がなきゃという想いもあって、自分でお店をやることにしました。最初は母と一緒に和洋ごちゃまぜの居酒屋みたいな店を寒川で。次に妻とふたりで、「Rico」という洋風酒場を茅ヶ崎ではじめました。地元の農家から仕入れた野菜が売りで、常連さんも来てくれるようになって、楽しくやっていました。

でも子どもが成長するにつれて、自分の中に食に対する疑問が出てきたんです。それまでは、ただ美味しいものをつくることだけを考えていましたが、当時妻が借りてきた食べ物の安全性に関する本を読んで、衝撃を受けて…。お肉はどうやってスーパーに並んでいるのか、とか、見過ごせない事実が見えてきて、自分がやっていることにすごい違和感を持っちゃったんですよね。それでも悩みつつやっていたんですけど、あるきっかけがあって、「もうやめよう」と思ったんです。

それは、子どもに興味を持ったことでした。自分の子どもが生まれて、それまでは苦手だったのに大好きになっちゃって、さらに知人の紹介で、小学校で地元野菜を使った授業をやったことがあったんですが、それがすごい楽しかったんですよね。自分自身も子どもと過ごす中で食のことを知りましたし、自分の子どもだけじゃなく次の世代に残すべきものを考えたとき、自分のスキルで何かできないかな、と思って。その取っ掛かりとして、「とにかく子どもと接してみよう」と、保育補助として公立の保育園で働き始めました。食とは全然関係ないんですけど、そのときは迷いなく決めましたね。

 

子どもが教えてくれた“自分自身の人生”

お店をたたんで、毎日子どもと過ごす生活が始まって、一時は保育士を取ろうかな、とも思うほど子どもがかわいすぎて大好きになっちゃって。そうしたら、今度は知り合いから、「保育園の給食をやらないか」という話が来ました。大好きな「子ども」と「食」のどちらにも関われるし、理念も素晴らしい園だったので「ぜひやらせてください」とはじめたんですが、ここでもまた、衝撃を受けてしまって…。

給食って、消毒や調理の温度など衛生面についての管理がすごく厳しくて、とても自分が子どもに食べさせたいと思えないものをつくらなきゃいけなかった。今思えば、それは経験としては必要だったんですけど、そのときは本当に身体が動かなくなってしまって、限界まで我慢した末に、「もう無理だ」という感じで辞めてしまいました。

急に職を失って、かなり落ち込んで、じゃあどうしようか、と考えたとき、やっぱり「料理やりたいな」と思ったんです。真面目につくった調味料とか、野菜とか、安全面をかなり重視してやりたいな、と。それで、「Ricorita」という名前を掲げてできることからはじめるんですが、ここでまた行き詰まるんです(苦笑)。

茅ヶ崎にあるギャラリーの奥で週2日だけランチをはじめたんですが、「肉を使わない」とか、「醤油や味噌は昔ながらの製法のものを使う」とか、「野菜は無農薬」とか、自分でルールを決めてつくっていました。できあがったお皿は、自分としては好きだったんですが、そのうち、自分でつくったルールをすごく窮屈に感じはじめたんです。「子どもたちに何を手渡していくのか」と、正義感に燃えてはじめたんですが、そのとき感じたのは、「自分はただ表現したいだけなんだな」ということ。お客さんの目を楽しませるような盛り付けが好きで、食べてももちろん美味しいのが好き。食べてもらうだけじゃなくて、その全てを楽しんでもらいたいんだ、ということに気付きました。

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これって、原点に戻っただけなのかもしれないですけど、その経緯を踏まないと本当には気付けなかったと思うんです。「美味しいもの」と「安全」が両極にあるとすると、行ったり来たり何度もぶつかりながら、今やっと、その真ん中くらいになった。美味さばかりでもダメだし、安全ばかり考えるのも違和感がある。たぶんその2つは、ある程度のバランスで両立するんです。

たとえば、お客さんのことを考えると、値段のバランスも大事です。ちゃんと作られた味噌や醤油はものすごく高いんですが、それを「安全だから」って値段に上乗せするのは、違和感がある。だったら、もう少しこだわりを緩めることで選択肢はいくらでも出てくるので、バランスを見ながら決めていくようにしています。

お肉も、今では使うようになりました。それは子どもがきっかけだったんですが、家では食べなかった肉を給食で食べるようになると、「食べたい!」と言ってくるようになったんです。最初は「ダメだよ」と伝えていたんですけど、結局それって、ぼくの価値観を押しつけているだけで、子どもを尊重していないな、と気付いて。「ダメ!」って言う精神の方がダメで、良い・悪いをきっちり決めるよりも、気持よく美味しく食べていれば、身体にもいいんじゃないかって。それからは気持ちが緩んで、家でも少し肉を食べるようになって、今は「Ricorita」のメニューも同じ考え方でつくっています。

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野菜を美味しく食べられるRicoritaのメニューは、子どもたちにも大人気。写真左は、いつも一緒に営んでいる奥様の都(みやこ)さん。

 

こんなふうに紆余曲折で時間はかかりましたけど、大切なことは、子どもが気づかせてくれました。変に真面目に考えちゃっていたストイックさが今やっと抜けて、悩み無しでいられる。何度も頭をぶつけながら、やっと今、揺れ動く自分を責めなくなったし、楽しくやれるようになった。

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子どものおかげで、「自分自身の人生を生きているな」と感じています。

 

旬の野菜を、リアカーで。

でも、今だに揺るがないのは化学調味料を使わないことと、旬の野菜へのこだわりです。単純に美味しいのはもちろんですが、春は苦いものが出てきて眠っていた身体が覚めるし、暑い季節のトマトやキュウリは身体を冷やしてくれる。その季節を過ごすのにちょうどいい食べ物ができていて、それを食べていれば、自然のサイクルに身体があってくる。移動販売ではできたてを提供できないので、使える食材や表現方法に制限が出てくるんですが、季節ごとにメニューを変えて、旬をできるだけ美味しく味わっていただくチャレンジをしています。

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“リアカー+小屋”というスタイルを思いついたのは、今から2年ほど前です。とにかく料理でやれることをしよう、といろいろアイデアを精査していたときに、商売の起源を知るべく、「店」という字を調べたんです。そしたら昔は「見世棚」って言って、小屋っぽい棚をつくって商品を並べて道端で売ったり、屋台を担いでそばを売っていたりしていたことがわかって、それいいな、と。リアカーなら移動しながら売れるし、どこかに置いていても、怒られたら逃げればいい(笑)。Facebook等でいろいろな人に問いかけたら、農家の小屋に立てかけてあったボロボロのリアカーが見つかって、もらえることになって。サビを落としたり、タイヤを変えたり、廃材を使ったり、改装するのに1年くらいかかりましたが、“Ricorita本店”が完成しました。

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完成当初は、写真右側のテーブルはなく、カウンターのみのシンプルなつくりでした。

 

こうして2015年5月から、茅ヶ崎の路上やイベントでリアカーでの営業を始めましたが、このスタイルはやっぱりお客さんの反応がいいですね。概念として「お店だ」ってわかりやすいし、こういうシンボル的なものがあると、お客さんも落ち着くんでしょうね。それに店舗と違って調理をしないので、僕も客席側に座っていることが多いんですが、そうすると、すごくコミュニケーションが取れるんですよね。狭いスペースなのでお客さん同士もすぐ仲良くなるし、なんだかつながっている感覚。お客さんとの距離は、お店をやっているときとは全然違います。お客さんと話すのは苦手だと思っていたんですが、今では僕自身が、いろいろな人とのコミュニケーションを楽しみながら営業しています。

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大磯市のつながりから、次なる一歩へ。

大磯市のことは、「Rico」をやっていた当初から知っていました。出店のお誘いもいただいていたんですが、当時は店舗営業があったので、お断りしていました。でも、紆余曲折の果てに食に戻ってきたときに思い出して、一度見に行ったら、すごい人が集まっていて、楽しそうで。そのときは夜市だったんですが、夜祭みたいな雰囲気で、ここならバルスタイルで食べ物とお酒の取り合わせを楽しんでもらえるかも、やってみたいな、と思いました。エントリーして、初出店したのが、2014年の7月。ちょうど2年前ですね。

当時は、まだリアカーは改装の途中だったのでテーブルで出店しましたが、「Rico」に来てくれていたお客さんとか、これまでつながったいろいろな人が来てくれて、祝福されているような気がして、うれしかったですね。その後も大磯市出店をきっかけに、本当にいろいろな人たちとつながりました。まず宮川酒店さんとつながって、「Ricorita」で出しているワインは今も宮川さんのところまで買いに言っています。「けむりカレー」の白川くん(白川清和さん)や「Nomadic Cafe」の健ちゃん(山口健太さん)もいろいろ相談に乗ってくれたり、イベントを紹介してくれたり。そんなつながりで、今ではカミイチ(小田原)やストーリーマルシェ(茅ヶ崎)、SUNDAY MARKET(辻堂)などに定期的に出店するようになりました。

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去年の夜市からは、大磯市にも基本的にリアカーで出店しています。出店場所までどうやって運んでいるのか、と良く聞かれますが、時速25km以下の速度なら、50ccのバイクでリアカーを引いて公道を走れるんです。このスタイルで走っていると、子どもには大人気。中には「見ちゃいけないものを見た」という感じで目をそらされる大人の方もいますが(笑)、どこかで見かけたら、あたたかく見守ってくださいね。

リアカー営業は、冬は寒すぎるなど難しいこともありますが、商売の原点みたいなものを味わい、消えゆく文化を惜しむのではなく楽しむ感覚で営業しています。ずっと続けてきたバイトも最近辞めて、今はやっと営業のリズムができてきたところ。将来的に考えているのは、もっと“子ども”と“食”をつなげたようなことをやりたいな、ということです。

昨年の冬は、9歳の息子がチャイをつくって、自分で描いた看板をぶら下げて、「Ricorita」の横で売っていたんですよ。目的はゲームを買うためのお小遣い稼ぎだったんですが、お客さんもすごい応援してくれて、息子もはじめは緊張して「いらっしゃいませ」も言えなかったんですけど、そのうち慣れてきて「またやりたい」なんて言っています。やってみてよかったな、って。今後、自分の子どもだけじゃなく、地域の子どもたちとワークショップなんかもやってみたいな、思っています。

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Ricoritaの横で、息子の葉太(ようた)くん(9歳)が営む「ヨウタのチャイ屋」。お手製の看板とともに。

 

今月の大磯市には、大人気の「海老レモン串パプリカ風味」をはじめ、旬の素材を楽しめる料理をご用意して行きます。「Ricorita」という名前の由来のひとつは、「自分(利己)を大事にすればまわりの人(利他)にも波及する」ということ。僕自身も楽しみますし、みなさんも、とにかく我を忘れるくらい、今年初の夜市の雰囲気を存分に楽しんでください!

 

【Ricorita(リコリタ)】

Ricorita

湘南地域を拠点に、店主自作の“リアカー+小屋”で営業する屋台風の移動式バル。茅ヶ崎鉄砲通りでの「星空バル」「青空バル」をはじめ、大磯市、カミイチ(小田原)、ストーリーマルシェ(茅ヶ崎)、SUNDAY MARKET(辻堂)など各イベントに出店。毎月1回、「さくら食堂」(茅ヶ崎)で“季節を遊ぶ。”をテーマにした出張酒場も開催している。

Facebookページ https://www.facebook.com/ricoritacorita/

ブログ http://gdrico.exblog.jp/

池田 美砂子

茅ヶ崎在住フリーライター、ひとりの娘のお母さん。人の言葉をありのままに聞くことで本質を見つめるインタビューを、ライフワークとしています。使命は、「ほしい未来を自分の手でつくる人を増やす」こと。この世にもっと、ワクワクを。