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大磯への移住は運命だったとしか思えない。北海道のおいしさとぬくもりを届ける豆屋「maru庄屋」店主の想い

2016.04.09 | 出展店舗
大磯への移住は運命だったとしか思えない。北海道のおいしさとぬくもりを届ける豆屋「maru庄屋」店主の想い

はじまりの春。4月から新しい暮らしを始めたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。慣れない土地での第一歩にドキドキしているあなたにぜひ味わってほしいのが、こちらの焼むすび(3個入り300円)です。“幻の大豆”と呼ばれる「黒千石(くろせんごく)」を入れて炊き込んだご飯に、ほんのりごま油の香ばしさが加わり、一口頬張れば気持ちもほっこり。大磯市でも、毎回早い時間に売り切れてしまう大人気商品のひとつです。

この焼むすびを販売しているのは、大磯に店を構えるお豆屋さん「maru庄屋(まるしょうや)」。その豊かな味わいの背景には、2年前に北海道から移住してお店を開いた店主・庄子詩子さんの、大磯のまちへの深い想いがありました。おむすびがもっと美味しくなる「maru庄屋」の移住ストーリー。春風を感じながら、ゆっくりと味わってみてください。

 

何かに導かれるように、北海道から大磯へ。

もともと主人も私も、北海道出身。30年以上も北海道から出たことがなく、私は2人の子どもを育てながら普通の主婦をしていました。でも4年ほど前、突然主人の転勤で、関東に来ることが決まって。「どこに住む?」という話になって調べたときに、まず惹かれたのが大磯のまちでした。主人の勤務地は武蔵小杉(川崎市)だったんですが、子育てするなら、東京や川崎じゃなくて、自然が多いイメージの「大磯っていうところが良さそう」って思っていて。行ったこともないのに、「大磯がいい!」って主人に言ってたんですよね。

でも、会社からダメと言われてしまったこともあり、結局、川崎のマンションに住むことになりました。そこでの暮らしは、私にとってはかなりカルチャーショックで…。そのとき子どもは5歳と1歳。お兄ちゃんは小さい頃から野球が大好きだったんですが、近くには小さい公園しかなくて、「野球禁止」と書いてあったり、誰が住んでいるかわからないマンションで、どよーんとした気持ちで暮らしていました。もちろん、いい友達もできたんですが、札幌の、クマが出るほど自然豊かな環境で、近所のおじいちゃんおばあちゃんもみんな知っているような土地から来た私にとっては、すごいギャップだったんですよね。

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お子さんを抱っこしながら大磯市に出店することも。

そんな毎日の中で、週末は大磯にサーフィンをしに通っていて、川崎とは違う空気と、のんびりした時間の流れを感じていました。その後3人目を妊娠して、追い打ちをかけるように、子どもの足音で階下から苦情が来るようになった頃、「やっぱり住みたいな」って思うようになったんです。それから少しずつ、物件を探し始めました。

 大磯のまちをくまなく歩いていた頃に、気になったのがこの家。ずっと閉まっていて、「募集中」の看板が出ていて、しかも店舗付き。部屋に入った瞬間にむせるほどボロボロで、畳も腐っているような状況でしたが、「自分たちでどれだけ手を加えてもいい」という条件で借りることにしました。その代わり、電気も水道もガスも、何が壊れても不動産屋はノータッチ。もう、賭けみたいなものですよね(笑)。自分たちで板を張り替えて、壁も塗って、畳も張り替えてもらって、3〜4ヶ月週末に通い続けて、ようやく住めるようになったのが、2年前の12月。やっと、念願の大磯に来られました。

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大磯町東町にある「maru庄屋」の店舗。あずき色の壁が目印です。

 

「何屋さんやろう?」

大磯で暮らし始めて、まず考えたのは、「何屋さんやろう?」ということでした。何軒か普通の家も見ていたんですが、ここはたまたま店舗付きの物件。「せっかくなら何かやろう」と主人とも相談しているうちに、思いついたのがお豆屋さんでした。北海道時代に、無農薬・無肥料・手刈りで豆をつくっている面白い農家さんと知り合っていて、「黒千石」というお豆を使ったおむすびが家族にはすごい人気だったんですよね。それで、このお豆を使ってなにかやりたいな、と思ったんです。

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それに、小さいころ私の実家でも豆をつくっていて、当時はあまり価値がわからなかったんですが、大人になってから、おばあちゃんやお母さんが煮てくれるお豆をすごく美味しく感じられるようになったんです。あの頃のあたたかさが蘇ってきて、ほっこりした気分になって。お豆屋さんって、大磯のまちの雰囲気にもあっているな、と感じますし、「私は大磯で豆屋をやる」って最初から決まっていたような、運命のようなものを感じます。

 店舗を改装して、お店をオープンしたのは、2014年5月。私はそれまで商売も販売も未経験で、最初は「本当にできるのかな?」って、不安のほうが大きかったんですが、大磯の人たちとのたくさんの出会いに支えられて、今まで続けて来られました。本当にありがたいなって思っています。

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焼むすびの包み紙に押されている「豆々しく。」のスタンプ。実は、庄子さんが小学生の頃、年賀状に使うために買ったものなのだとか。お店を開くことが決まった頃に思い出し、実家に電話して発見。今ではお店のキャッチフレーズになっているそう。これもまた、運命的なエピソードです。

 

北海道と湘南の“架け橋”になりたい

「maru庄屋」では、北海道から仕入れたお豆を量り売りしています。看板商品は、焼むすびに入っている正露丸サイズの小さな大豆「黒千石」。“幻の豆”と言われているのは、昔は作られていましたが、あまりにも小さくて農家の人が大変なので、一時は作る人がいなくなってしまったから。それが最近、ある農家の納屋から何粒か出てきて、それを植えて広がったそうです。それでも今も作られている数は少なく、今もなかなか手に入りません。北海道ではお菓子にも入れたりしますが、これをご飯に混ぜて炊くと少し色が着いて食感も良く、おすすめです。うちの雑穀にも、この黒千石が入っているんですよ。

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その他にも、白や紫色の花豆は、一般のスーパーには売っていないこともあって人気です。甘く煮る他、ピクルスみたいにすると美味しく、保存食にもなります。また、紫の花豆を甘く煮るときに、コーヒーを入れると、残ったつゆまで美味しくなるんです。以前レシピを聞かれてお渡ししたこともありますが、これからは食べ方も、お伝えしていきたい。大磯市では瓶を持ち込んで量り売りしているので、ぜひ少量から、試してみてくださいね。

人気の焼むすびは、ありがたいことに、多い時は400個が売り切れてしまったほど。そのときはたしか、9升(!)のお米を炊きました。湘南のキヌヒカリと北海道のオボロヅキをブレンドしたお米に、お醤油やみりんなどの調味料を入れて炊いています。大磯市限定で、3つのうち1つは、湘南産シラスと北海道産ワカメ入り。良く「レシピは企業秘密ですか?」と聞かれますが、秘密は全然なくて(笑)。オボロヅキがもちもちしていて、黒千石から色が出ること。また、少しごま油をつけて焼いているので、香ばしさが特徴でしょうか。ご家庭のフライパンでも美味しくできると思いますよ。

最近は、大磯市でイカ飯の販売をはじめました。函館で有名なイカ飯ですが、なかなかご家庭でつくる機会はないですよね。その他にも、北海道の実家で採れるトウモロコシでつくった豆乳のコーンスープを販売したり、お店では実家の野菜や夕張メロンの販売、カニの取り寄せもしたりしています。一方で私たちも帰省するときは、湘南のシラスを持って帰ったり、みかんを送ったり。そうやって、北海道と湘南のお互いのいいところを伝える、“架け橋”みたいになれたらいいな、と思っています。

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いろんな可能性を秘めたまち大磯で、これからも。

 大磯市のことは、引っ越してきてすぐに知りました。大磯の方はみんなすごくフレンドリーで、住み始めて1週間くらいでご近所の人と鍋パーティをして、大磯のことをいろいろ教えていただいて。そのときに、「大磯市っていうのがあるから、出てみたら?」と言われたんです。見学に行ってみると、本当に楽しくて、出してみたいなって思って。初回は店舗オープンの直前に、焼きむすびなしで、お豆の瓶をたくさん並べて出店したんです。

 出店してみると、準備も当日も慌ただしくて他のお店を見る暇もないのですが、ご高齢の方といろんなお話をしたり、子どもと同じ保育園のお父さんとつながったり、お客さんと近いのがすごい楽しくて。リピーターになってくれる方も多いですし、後日わざわざ店舗に来てくれる方もいて、ありがたいな、と思っています。出店者同士も自然につながって、パウンドケーキの「三日月」さんや、老舗和菓子屋の「友月堂」さんは、うちのお豆を使った商品をつくってくれて、コラボレーションも生まれています。うちなんて、看板も出していないような小さなお店なので、大磯市がなかったら、近所の人しか知らなかったと思います。でも、大磯市のおかげで、遠方の方もお店にも来てくださるし、横のつながりもたくさんできました。大磯市は、本当に良い循環を生み出してくれているな、と思います。

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実は私、大磯って小さいまちなので、商売やるなんてどうなのかな、と思っていたんです。閉鎖的なのかな、って…。でも、ご近所のお惣菜屋さん「よろずや」さんを通じて、商工会や「大磯逸品の会」に顔を出してみると、みんな歓迎してくださって、本当に優しいんですよね。「こんな老舗のみなさんが受け入れてくださるのか」って、涙が出そうでした。近所さんの顔が分かって、「美味しかったよ」と言ってくださるお客様がいて、こういうつながりを望んでいたので、今の暮らしが本当に嬉しくて。永住してもいいよね、って主人と話しているくらい、大磯のまちが気に入ってしまいました。

大磯市のお客さんには、ぜひ大磯のまちも一日楽しんで行ってほしいです。山登りもおすすめだし、歴史的な建物を見ても楽しいし。最近はいろいろな活動をする若い人も増えてきていて、どんどんまちが面白くなっています。

 「古いものも良いし、新しい物も良いね」って価値観があって、いろんな可能性を秘めた大磯市と大磯のまち。みなさんも楽しんで行ってくださいね!

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【maru庄屋】

大磯町東町に店を構える豆専門店。希少な「黒千石」をはじめ、北海道産の多様な豆を量り売りするほか、夕張メロンなど北海道の美味しいものを販売している。大磯市には、2年前の店舗オープンの前月から出店し、焼むすびが毎回売り切れとなるほど人気を集めている。

 Facebookページ https://www.facebook.com/marushoya/

池田 美砂子

茅ヶ崎在住フリーライター、ひとりの娘のお母さん。人の言葉をありのままに聞くことで本質を見つめるインタビューを、ライフワークとしています。使命は、「ほしい未来を自分の手でつくる人を増やす」こと。この世にもっと、ワクワクを。