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本当の“美味しさ”は、自然との共生から。進化し続ける無添加手作りハム「湘南ぴゅあ」

2015.10.17 | 出展店舗
本当の“美味しさ”は、自然との共生から。進化し続ける無添加手作りハム「湘南ぴゅあ」

大磯漁港の名物といえば、新鮮な魚介類。でも大磯市には、美味しい豚肉を提供してくれると話題のハム屋さんが出店しているのをご存知でしょうか。

潮風に吹かれながら、自分で炭火で焼いて、ソーセージやハムに舌鼓。そんな贅沢なひとときを提供してくれるのが「湘南ぴゅあ」。平塚に工場を構え、約30年に渡り養豚から精肉、加工販売まで一貫して行ってきた老舗ハム屋さんです。

「ぴゅあ」という名前の由来をたどっていくと、そこには様々な人の想いとドラマがありました。営業部の平井三郎さんが語る「ぴゅあハム」に込めた想い、澄み切った秋空に包まれた平塚の工場から、心をこめてお届けします。

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自然と共生し、世の中にないものをつくろう。

もともと、「湘南ぴゅあ」の前身は、「平井畜産」という、僕の祖父が始めた養豚でした。養豚しながら出荷をしていたんですが、一生懸命育てた豚が安く買われてしまうといった現実もあり、「このままでは畜産業がダメになってしまう」と感じて。それで、「自分たちで売ろう。売るためにハムをつくろう」と考えて、平井畜産加工部が立ち上がりました。でも、1980年代の高度成長・大量生産の中で、どうしても小さい会社は負けてしまいます。「ずっと残る会社をつくっていこう」。そう考えたとき、当時当たり前だった添加物は使わず、手づくりで、美味しいものをつくっていこう、と決めました。

その加工部を発展させるためにつくった会社が「湘南ぴゅあ」です。父が社長に就任しましたが、その2年後に亡くなってしまって。今度はみんなでお金を出し合って、「もう一度やり直そう」ということになりました。豚をつくる人、ハムをつくる人、販売する人、会社を経営する人。みんながやりたいことをやる、いわゆるファンド会社のような形式。とにかく美味しいものが大好きな人たちが集まったので、「美味しいものって何?」「畜産業が長く続くには?」「みんながハッピーになるには?」みたいな議論を重ねたりして。じゃあ、自分たちで豚も育てて、加工販売まですべてやって、環境に負荷をかけずに循環型で、世の中にないものをつくろう、と。それが、今の「株式会社湘南ぴゅあ」のはじまりでした。

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湘南ぴゅあのホームページより

 

「美味しさ」って、糖度の高さだったり、科学的に証明されるものもありますが、それに加えて、「地域がどう変わっていくか」とか、「食べたら環境も良くなる」とか、いろんな指標があると思うんですよね。安心安全だけど美味しくないのも違うし、環境に負荷をかけて日持ちのために添加物を使うのも違う。今で言う「自然との共生」です。「湘南ぴゅあ」は、それを自分たちでずっとやってきた会社なんです。

 

美味しさにこだわり、コミュニケーションで食を広げる。

創業以来続く僕らのこだわりは、とにかく「美味しいものを届けたい」ということです。無添加のハム・ソーセージって、日持ちもしないし、紅くないし、パサパサしていて、美味しくないなって僕はずっと思っていて。でも僕らのライバルは、そういった無添加ハムではなくて、普通の美味しいハム。この会社には、「美味しい」をキーワードにネタを持ち寄って、仕事度外視で、朝まで話してしまうような文化があって。30年近く経った今でもずっと、社内のラボに美味しいものが好きな人が集まり、「どうしたらもっと美味しいハムを作れるんだろう」って、研究を続けています。

そんな中で、「炭」で乾燥すると美味しくなることや最適温度など、様々な研究成果がありましたが、ある程度おいしいハムがつくれるようになったときに発見したのが「乳酸菌」です。きっかけは、ある人が、「塩漬けのときにヨーグルトを入れるといい」と言い出したこと。やってみると、ぬか漬けなんかと同じで、中にいる菌が一定で生きているから、日持ちがしたんです。それで、乳酸菌を一個一個、20年近く調べ続けて、ついに見つけて。乳酸菌を使ってハムを熟成させる加工技術を定義化して特許を取りました。普通の無添加ハムが14日のところ、乳酸菌ハムは2年持ちます。しかもその乳酸菌は発色するからハムが紅くなって、味も食感もいい。ヨーロッパの食品は全部殺菌して味を付けるんですが、日本は湿気もあるし燃料もあるわけじゃないので、その文化の方が強い。ある意味日本ならではのハムなんじゃないかな、と思っています。

そんな研究を30年近くずっと蓄積していて。だから「これが湘南ぴゅあの味です」ってのはまだない、と言うか、「今はこの味です」という感じ。これからも、味は進化し続けていきますよ。

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また、販売のコミュニケーションにもこだわりを持っています。僕は5年前まで6〜7年、ドイツやイタリア、スペインなどヨーロッパで修行していたんですが、そこで感じたのは、「日本人は魚は上手だけど、肉は上手に食べられないんだな」ということ。たとえば日本人は、鮪も鮭も、内臓から全部丸ごと食べる文化を持っていますよね。でも肉は、骨や皮はどこに行っちゃうのか知らないし、顔も見ない。肉のパーツだけを見て、一頭ベースで考えていないんですよね。ヨーロッパは逆に、魚の食べ方が下手なんですが、それはコミュニケーションの違いにあるんです。

日本のお肉屋さんでは、消費者の方から「とんかつにするからロースの厚切りちょうだい」って言う。最初から「これを買う」と決まっていて、それ以外は買わない。ニーズベースなんですよね。でもヨーロッパでは推してくるんです。「今日何にします?」と聞いて「とんかつ考えてるんです」と返ってきたら、「ロースも肩ロースも売れちゃったけど、バラ肉でもこうしたら美味しいとんかつがつくれるよ」とか教えてくれる。「いや、これがすごい美味しいんですよ、試してください」って、ちょっと新しい提案をしてもらうだけで、食は広がるんですよね。ヨーロッパでは、工場でも店でも、「売れるもの」という視点じゃなくて、「一頭どうやってつかったらいいのか」って一頭ベースで考える。日本には、それが全く足らないと感じています。

だから、僕らは「豚一頭丸ごと食べよう」とか、「今日ロースを食べたら、明日はバラもいいよ」って、コミュニケーションをとりながら販売しています。どんどん人と人とのつながりが減っていく中で、もう一度コミュニケーションを取り戻していくことが大事なんだろうな、って思っているんです。

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ただの「美味しいハム屋」で終わりたくない。

大磯市に出店を始めたのは、僕がヨーロッパから帰ってきて、「地域密着型の販売をしたい」と思ったからです。それまでは、大手デパートや高級スーパー、自然食品屋さんなどに卸していて、地域での販売は全くない“ドーナツ状態”でした。でも、ドイツで僕が修行していたのは、400人のまちで唯一のハム屋。ちょっとしたウワサもすぐに知れ渡るような環境の中で、地域の大切さみたいなものを感じていました。それで、帰国後すぐ、始まったばかりの大磯市を見に行って、「これはすごい」と思って。大磯の役場で、「大磯市に出たい」と直談判したんです(笑)。それからずっと、出るようになりました。

大磯市では、持ち帰り用の販売をしていますが、バーベキューコンロを並べていて、お客さんがハムやソーセージを自分で焼いて食べることもできるようにしています。そうすることで、お客さんとコミュニケーションが取れますし、お客さん同士も、同じコンロを一緒に使っていると会話が生まれたりする。最初の頃は、150個で豚を一頭丸ごと食べられる「豚一頭バーガー」というのを販売したこともありました。150個売れたら、豚一頭消費されるという仕組みで、盛り上がりましたね。

そうやって出店を続けているうちに行列もできるようになって、今では、地域の人たちに「うまい肉といえば“湘南ぴゅあ”だよね」と言ってもらえるようになりました。大磯市で知って、直売所まで買いに来てくれる人や、ソーシャルメディアを介して注文してくれる人も出てきて、手応えを感じています。

また、実行委員や他の出店者の方々とのつながりが生まれて、事業の相談をしたり営業先を紹介し合えるような、地域の仲間ができました。最近では、大磯の田んぼを荒らす猪でソーセージをつくったり、間伐材の炭を使って、大磯市で売れば売れるほど森がきれいになる仕組みをつくったり。これって、大磯市をプラットフォームとした地域活性化のモデルじゃないかな、と思うんですよね。僕もただ出店するだけじゃなく、どうやって大磯に貢献するかを考えていきたいな、と思っています。

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最近では、「湘南ぴゅあ」と同じやり方で、南伊豆で猪や鹿の処理場を作ったんですが、こういう持続可能なビジネスモデルをこれからも生み出していきたいです。地産地消とか、6次産業とか、地域の課題解決とか、それが軸にならないと、豚を育てて美味しいものをつくっても、ただの自己満足になっちゃう。内輪の美味しいハムやさんで終わりたくないので、そこはプライドを持って取り組んでいきたいですね。

そんなことを言いながらも、僕は食べるのも好きだし、楽しいからやってるんです。「湘南ぴゅあ」は、みんなに美味しいものを届けたい。それは、自分たちも「美味しいものをつくりたい」という気持ちがあるからです。だから、大磯市で見かけたら、「今日はどんな味?」って味をチェックしたり、「美味しくなったね」とか、「不味くなったね」とか、気軽に声をかけてください。その声を持ち帰り、これからも固定概念にハマらないモノづくりを続けていきたいと思っています。

みなさん、これからも「湘南ぴゅあ」を叱ってくださいね(笑)!

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【湘南ぴゅあ】

「自然との共生」を掲げ、無添加手作りのハム・ソーセージ、豚肉を提供。平塚市の工場と直売所を拠点に、飼育から精肉、加工販売まで、一貫して行っている。大磯市には第3回目から出店し、無添加手作りのハム・ソーセージが来場者の人気を集めている。

ホームページ http://www.pureham.com/

Facebookページ https://www.facebook.com/pureham

池田 美砂子

茅ヶ崎在住フリーライター、ひとりの娘のお母さん。人の言葉をありのままに聞くことで本質を見つめるインタビューを、ライフワークとしています。使命は、「ほしい未来を自分の手でつくる人を増やす」こと。この世にもっと、ワクワクを。