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東京から大磯へ移住した仲良し姉妹が開く、全粒粉のパウンドケーキ専門店「三日月」

2015.06.29 |
東京から大磯へ移住した仲良し姉妹が開く、全粒粉のパウンドケーキ専門店「三日月」

2014年10月、大磯で永年愛されてきた肉屋「ミートショップ ナガオカ」を改装して誕生した、全粒粉のパウンドケーキ専門店「三日月」。お店を営むのは、東京からやってきた塚原昌子(姉)さんと明子(妹)さんの仲良し姉妹。大磯市の出店を機にパウンドケーキを売り始め、まさかお店を持つことになるとは夢にも思っていなかったと語る、おふたりの歩みをおうかがいしました。

 

大磯市をきっかけにパウンドケーキの販売を始める

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2015年5月に開催された「大磯市」にて。左がお姉さんの昌子さん、右が妹の明子さん。

昌子さん(以下姉):私たちは2009年にふたりで大磯に引っ越してきました。それまではふたりとも東京に住んでいて、私は出版社、妹は輸入雑貨関係の会社で10年以上働いていたんです。ただ、出身は静岡県なので、ふたりとも東京という土地は合わないとずっと感じていて、いずれは出るだろうとは考えていました。

明子さん(以下妹):ある日、東海道線に乗って伊豆の実家への帰省中、何となく気になっていた大磯駅にふと降りてみたんです。 その時にふたりとも「何か、いい!」と感じて、その1ヶ月後ぐらいにインターネットで見つけた物件を見学に行き、帰りの東海道線に乗りながら、「よーし、ここにしよう!」「引越してしまおう!」とふたりで決めました。

姉:大磯に来て数ヶ月ほどして、町で暮らす人の知り合いをもっと増やしたいなと考えていた時に、大磯で自分たちの田んぼで育てたお米でお酒を作る「僕らの酒プロジェクト(現・大磯農園)」という活動に興味を持ち、1日体験に参加しました。その時にたまたま大磯市の実行委員の方に出会い、お店の数を増やしたいから次回の大磯市で古本の出店してみる?という話になったんです。大磯市が始まった当初は、今では想像がつかないような本当に小さな市で、十数店舗しか出店していなかったので、ボランティアのような気持ちで、第2回目に初出店しました。その日の打ち上げで「古本以外に何か出せるものないの?」と聞かれ、思い浮かんだのがお菓子でした。毎週末どちらかの友達が泊まりにきていたので、おもてなしにパウンドケーキをよく焼いている、という話をしたら、じゃあそれでやってみようということになって。その話をいただいて、「自分たちのお店が出せるの?」「そんなことをしていいの?」とドキドキしました。

妹:実は姉妹で漠然と何かやってみたい、という思いは昔からずっとあって、10年ぐらい前に「三日月」という屋号だけは決めていたんです(笑)。その夢が思いもよらぬところから実現して、驚きと嬉しさでいっぱいでした。

 

バターの焼ける香りは、家庭の幸せを感じる香り

左からブルーチーズとクリームチーズを使ったお酒にぴったりな「チーズ&チーズ」250円、神奈川県伊勢原のトマト農家さんが作る、生地にもトマトを使った「あいこと王様トマト」250円、大磯市で出会ったお茶農家さんの紅茶を使った「和紅茶クランベリー」240円。

左からブルーチーズとクリームチーズを使ったお酒にぴったりな「チーズ&チーズ」240円、神奈川県伊勢原のトマト農家さんが作る、生地にもトマトを使った「アイコと王様のトマト」250円、大磯市で出会ったお茶農家さんの紅茶を使った「和紅茶クランベリー」230円。

 

姉:うちは母親が料理をすることが大好きで、何でも手作りしてくれたんです。パンやお菓子を焼いたりもしていたので、家に帰るといい匂いがして、その匂いを幸せと感じる感覚が残っているんですよね。バターを使わないお菓子もいっぱいあると思うんですけれど、私たちはバターの焼ける香ばしい匂いが好きなんです。だから、バターを使わないということは考えられなくて、粉を多めに配合して油分が多くなりすぎないようにしています。小麦の味が大好きなので、粉はより小麦の味がしっかりと伝わる全粒粉をたっぷりと使っています。

妹:大磯市がベースにあったので、できるだけ毎月季節の味にしようと思って、最初は大磯でみかんが採れていたのでみかんを使いました。その翌月からは「何が採れるんですか?」と、大磯駅前の「地場屋ほっこり」さんやお隣の「パンの蔵」さんに聞いて、農家さんを紹介してもらったり、農家さんの知り合いの農家さんを教えてもらったり。季節の味を追いかけている変な姉妹がいる、そんな風に紹介してもらい、地元農家さんとのつながりを少しずつ広げていきました。

姉:農家さんのところへ行くと、育てている作物を子どものように話して下さるんですよね。だから、どうしたらおいしくなるかをすごく真剣に考えて、仕上がると「こんな感じにしました!」といつも持って行くようにしています。

 

「ミートショップ ナガオカ」を町の人の力を借りて「三日月」へ

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姉:今店舗として使わせていただいている物件は、地元では知らない人がいないぐらい有名な「ミートショップ ナガオカ」という、2代続くお肉屋さんだったんです。100歳のおじいちゃんと息子さんがやっていらっしゃったんですが、2014年に惜しまれながらも閉店されたんです。ふたりで、角地ですごくいい立地だし、雰囲気もいいところだね、どうなるのかな?と話をしていたら、2013年の年末ぐらいに長岡さんから「お店を見にきてみる?」という話をいただいて、まさかという感じでした。

妹:長岡さんとは、閉店前にお肉屋さんとして大磯市に出店されていた頃に、出店者同士で交流するようになっていたんです。そのうちに私たちの友人が長岡さんとすごく親しくなり、閉店後は借りる人もいないだろうなぁ、誰かいればなぁ……という話をされていたそうで、その時に「三日月はどうかな?」という話を出してくれたみたいなんです。

姉:自分たちでも2、3年ぐらい物件を探していたんですが、キッチンまわりに手を入れたいというと、賃貸では難しいという理由で、最終的に難しくなることが多くて。だから、ここを借りられたのは本当に幸運でした。ほとんどそのままゆずり受けて、「好きにしていいから」と言っていただけたので、 自分たちの手で改装することにしたんです。

妹:そうしたら、これまでに大磯の暮らしの中で知り合った工務店さん、電気屋さん、水道屋さんが、「任せとけ! 大丈夫だから」と言って、みなさん破格の……というか、遊びに来てるぐらいの感じでみなさんの空き時間に来て、わざわざ手伝ってくださって。本当にありがたいお話で、町のみなさんのパワーをすごく感じました。

 

お客さんが来てくれるだけで、疲れが吹っ飛びます

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 カタカタと木をゆらすと開く、魅惑の小さな窓口。ここからパウンドケーキの受け渡しやお客さんとの会話を楽しむ。

姉:会社勤めをして単調に仕事をしていると、「毎日楽しいな」と感じることは、なかなか難しいと思うんです。でも、ここでケーキを焼いて、お客さんが来て話していると、こないだおいしかったよーとか、今日は誰々さんのところに持ってくよとか、そういうキーワードでふっと嬉しくなるんです。

妹:売り場窓口のあの小さな窓からお客さんの顔が見えると、その瞬間、疲れが吹っ飛ぶんですよね。なかなか休みがとれなくて、体はツライんだけど、気持ちでもっていける。そこが会社勤めの頃とはまったく違います。

姉:大磯に来てから、良い意味で先の予測がまったく立たないんです。大磯に来た頃はケーキを焼くことを生業にしているとは思っていないですし、1年前の自分たちは工房を持ちたいなといいながらも、まさか自分たちが本当に工房を持っているとは思ってない。だから、私たちには1年先、半年先もどうなっているのかはわかりません。けれど、この先も「三日月」を続けているということだけは間違いないんです。

 

【三日月(みかづき)】

2014年 10月に開業。大磯周辺を始め、神奈川県の平塚、秦野、伊勢原など、近隣で採れる季節の食材を追いかけながら全粒粉のパウンドケーキを作っている。季節やその日、その時間によってふくらみ方が違うため、自分たちの感覚が伝わりやすいものがいいねと手作業で作っている。直売所では常時約6~8種類がそろう。 「三日月」という名前の由来は、ふたりの名前をばらばらにすると、日が3つと月が1つになることから。

 

<住所>神奈川県中郡大磯町大磯1929
<電話>090-9688-7443(姉)、もしくは090-9836-3356(妹)
<営業時間>11:30~売り切れまで
<営業日>木~土曜
<HP>http://mikazuki.biz/blog/

【プロフィール】

塚原昌子(姉)さん
愛称は姉ちゃん。
出版社に就職後、編集者として資格書や実用書を担当する。
大磯へ移住後、半年ほど会社勤めを続けた後に退職し、フリーランスの編集者へ。
現在は、「三日月」の仕事を最優先に、
週に2日ほど編集や校正の仕事も行なっている。

 

塚原明子(妹)さん
愛称はあっちゃん。
雑貨やアパレル関係の生産や貿易の事務スタッフを経て、大磯への移住を機に会社を退職。
パン好きがこうじて、 大磯駅前の「パンの蔵」で1年ほどアルバイトをする。
現在、副業で週に2日は以前の会社に紹介してもらったインテリア関係の
会社でホームページ制作を担当している。

上浦 未来

大磯在住ライター。愛知県生まれ。編集プロダクションを経て独立。18 歳で初ひとり旅に出て以来、旅にハマり、東南アジア、インド、中東、南米など、10年ほどかけて約 30 カ国を巡る。イスラム圏好きで、お気に入りの国はイラン。現在はイースト東京や地方都市など、国内で盛り上がるスポットの発掘に興味津々。体験ルポなどが得意。